便秘ってどんな病気?

便秘とは、便を十分かつ快適に排出できない状態をいいます。

医学書的には、便秘は週2回以上の排便のない状態が1か月以上続くことと定められています。しかし排便習慣は個人差が大きく、便秘は排便回数のみできめられるものではありません。3-4日排便がなくとも、症状が伴わなければ必ずしも便秘症にはなりません。

便秘の原因は?

便秘の原因には、腸に何らか狭いところがある器質性便秘と、それ以外の機能性便秘に分けられます。

さらに他の病気による症候性便秘や薬剤による便秘もあります。

器質性便秘
急に起こる排便の障害とともに、腹部膨満感、腹痛、嘔気・嘔吐などが生じます。症状は極めて重く、緊急治療を要することもあります。原因としては大腸癌、クローン病による狭窄や、腸閉塞、その他の臓器の癌による腸の圧迫も原因となります。
機能性便秘
慢性の便秘で、消化管検査で特に異常がないものを機能性便秘といいます。
弛緩性便秘痙攣性便秘直腸性便秘に分けられます。
緩性便秘弛緩性便秘は、大腸の機能がおちて動きが悪くなることで大腸が伸びてしまい、便が大腸内に長時間とどまる便秘です。便が大腸の中に長時間いることで、便がカチカチに硬くなり、さらに便が出にくくなります。食物繊維の摂取量の減少が関与していると考えられています。
攣性便秘痙攣性便秘は、自律神経の異常で腸の痙攣が起こり、便の輸送が遅くなる便秘です。この便秘には「過敏性腸症候群の便秘型」が含まれます。
腸性便秘通常、便が直腸まで運ばれると直腸の壁を刺激し、排便の反射が起こります。しかし直腸性便秘は、直腸に便がたどり着いても排便の反射が弱く、便意が起こらないことで起こる便秘です。主な原因は、仕事などのために習慣的に便意を我慢、無視し続けることと考えられており、習慣性便秘とも呼ばれます。(特に接客業の方、仕事で椅子に座りっぱなしの方は要注意です。)
症候性便秘
症候性便秘とは、内分泌の病気、膠原病、神経の病気などが原因でおこる便秘のことです。代表的な病気として糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などがあります。
薬剤性便秘
向精神薬、抗うつ薬などの薬物の服用や、下剤を飲みすぎることなどで起こる便秘です。

どうやって診断するの?

当院では便秘症状の患者さまに診察を行った後、必要に応じて腹部レントゲン検査、腹部超音波検査、血液生化学検査などを行います。

またさらに提携の医療機関と協力し、腹部CT検査や大腸内視鏡検査を行うこともあります。症状の強さに応じて提携医療機関に入院をお願いすることもあります(腸閉塞や大腸癌などの大きな病気に対応するためです)。

どうやって治療するの?

器質性便秘
原因となる病気への対応・治療を優先して行います。
機能性便秘
皆さんがお悩みの便秘の多くはこの機能性便秘です
生活習慣とのかかわりが強く、食生活を含めた日常生活習慣の改善をまず行います。
以下に詳しい治療を記載します。
弛緩性便秘
原因として、腸に到達する便がいつも少ないために腸への刺激が足りないことが挙げられます。食物繊維をたくさんとることは大腸の便量を増やす効果があるため、この便秘に効果的です。食物繊維は1日24グラム以上が理想とされています。また、マグネシウムの不足も便秘の原因とされていますので、マグネシウムを多く含む玄米、納豆、ナッツ類を多くとるようにしましょう。そのほか日常生活の注意点として、十分に水分をとること、十分に運動をすることもおすすめです。生活習慣の改善でも効果が得られない場合、お薬の治療をはじめます。内服の便秘薬は数多く存在しますが、最近の知見では塩類下剤:酸化マグネシウム(商品名:マグミット®)や刺激性下剤:センナ(商品名:プルゼニド®)などの古い薬はあまりおすすめされず、ルビプロストン(商品名:アミティーザ®)、エロビキシバット水和物(商品名:グーフィス®)、リナクロチド(商品名:リンゼス®)などの新薬が使用されます。
攣性便秘
日常生活のストレスが原因とされているため、日常生活のストレスを減らすことが基本となります。
効果がない場合はやはりお薬の治療をはじめます。
アミティーザ®、リンゼス®などを使用します。
刺激性下剤は腹痛の症状を悪化させるため、使用しません。
直腸性便秘
直腸性便秘は排便に対する抑制・無視が病態の基盤にあることから、日常生活の見直しが必要です。
規則正しい食生活、生活リズム、そのうえでの排便習慣の確立が治療の基本となります。
一時的に排便反射を誘発する座薬、浣腸が用いられます。
症候性便秘
おおもとの病気の治療が基本となります。症状応じて機能性便秘のお薬が使用されます。
薬物性便秘
弛緩性便秘と同じ治療が行われます。

便秘でお困りの方は当院でご相談ください!